2021-10-01
当事務所で扱った事例です。
父親(被相続人)が不動産(住宅である家とその敷地)を残して亡くなったところ、相続人である子供達数名が共同してその不動産を売却して、その代金を法定相続分に従って分配することになりました。
不動産業者に依頼して売却することはできましたが、相続税がかかるほどの財産価値はなく、相続税は支払わずに済みました。
ところが、不動産業者への仲介手数料や司法書士への登記の手数料等を支払った上で、譲渡所得税が課税されることになりました。
譲渡所得税とは、不動産を売却した時に得た利益にかかる税金のことです。その計算においては、不動産を取得した時にかかった費用(その不動産を購入・建築した時の代金額)などを控除することができます。その費用等の額については領収証等によって証明する必要がありますが、その証明ができない場合は、概算取得費として、譲渡価額の5%が控除されるだけです。
本件では、父親が数十年前に購入した物件であったこともあり、その領収証等が残っておらず、費用の立証ができませんでした。したがって、取得費用としては、概算取得費として5%しか控除できず、結局、譲渡所得税の額としてはかなり大きな額が課税されました。
また、不動産を売却して代金を得たことによって所得が大きく増えたために、それに連動して、住民税、国民健康保険税、介護保険料の額も大幅に上がりました。
本件では、当事務所の依頼者は、元々は住民税非課税で、国民健康保険税も低額、介護保険料も一番低い第1段階でした。
しかし、不動産の売却代金で所得が増えたことによって、以下のとおり税金の課税がなされました。
・住民税は、長期譲渡所得(一般)として、市民税は課税標準額(所得金額-所得控除額)に対する3%、県民税は2%が課税されました。
・国民健康保険税は、基礎課税が基準総所得額(総所得金額-基礎控除)に対する8%、後期高齢者支援金等課税額が2.6%課税され、基礎課税は課税限度額が63万円、後期高齢者支援金等課税は課税限度額が19万円と定められており、いずれも課税限度額を超えたため、63万円と19万円の合計82万円が国民健康保険税として課税されました。
・介護保険料は13段階中の12段階まで引き上がり、年額157,300円が課税されました。
結局、本件では、売却代金として900万円程度を得られましたが、その中から、譲渡所得税、住民税、国民健康保険税、介護保険料で、合計約250万円を支払うことになりました。相続税は基礎控除額に届かなかったために支払わなくて済んだものの、売却したばかりに複数の税金が課税され、その金額も予想以上に高くて、今更ながら重税感を強く抱き驚いた次第です。
相続人の間で分割の方法に特段争いがない場合でも、本件のように相続した不動産を売却するときには、不動産業者の仲介手数料や司法書士の登記手数料のほかに、様々な税金が課税されることになりますので、留意する必要があります。
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