配偶者と非嫡出子の法定相続分が被相続人の死亡の時期により異なることに注意
1、被相続人の死亡が昭和55年12月31日以前
①配偶者と子が相続人であった場合、その法定相続分は、配偶者は3分の1、子は3分の2、②子な どの直系卑属がおらず配偶者と直系尊属が相続人であった場合、その法定相続分は、配偶者が2分の1、直系尊属は2分の1、③直系卑属も直系尊属もおらず、配偶者と被相続人の兄弟姉妹のみが相続人であった場合、その法定相続分は、配偶者が3分の2、被相続人の兄弟姉妹が3分の1となります。
2、被相続人の死亡が昭和56年1月1日以降
①配偶者と子が相続人であった場合、その法定相続分は、配偶者は2分の1、子は2分の1、②子などの直系卑属がおらず配偶者と直系尊属が相続人であった場合、その法定相続分は、配偶者が3分の2、直系尊属は3分の1、③直系卑属も直系尊属もおらず、配偶者と被相続人の兄弟姉妹のみが相続人であった場合、その法定相続分は、配偶者が4分の3、被相続人の兄弟姉妹が4分の1となります。
3、非嫡出子について
(1)被相続人の死亡が平成13年6月30日以前
平成25年法律94号による改正前の民法により、非嫡出子(※1)の法定相続分は嫡出子(※2)の2分の1 とされていました。
(2)被相続人の死亡が平成13年7月1日~平成25年9月4日
最大決平成25・9・4民集67巻6号1320頁の民法900条4号ただし書前段を違憲とする判決により、非嫡出子と嫡出子の法定相続分は同等とされました。
嫡出子と嫡出子でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われており、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されないこと、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという国民意識の変化等を汲んで、最高裁は上記の判断をし、平成13年7月1日以降に発生した相続については、実務上、非嫡出子の法定相続分と嫡出子の法定相続分は同じ割合にすべきものとして取り扱うことになりました。
(3)被相続人の死亡が平成25年9月5日以後
上記の最高裁の判断を受けて民法が改正され、平成25年9月5日以降は、非嫡出子と嫡出子の法定相続分は同等とされました(民法900条4号)。
4、遺産分割にあたっては、配偶者の相続分と非嫡出子の相続分は上述のとおり被相続人の死亡の時期によって差異があることを念頭に置かないと、大きな間違いをおかすことになりかねません。注意が必要です。当事務所でもそのような案件を2回ほど経験しました。
※1 非嫡出子とは、法律上の婚姻関係がない男女の間に生まれた子どものことをいいます。 嫡出でない子(非嫡出子)は、その父または母が認知することができます(民法779条)。
※2 嫡出子とは、法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた子どものことをいいます。