2020-02-28
今年は、民法のうちの債権法部分の大改正の施行が予定されていますが、2019年も、多くの法改正が施行された年でした。備忘のために、おさらいをしておこうと思います。今回は、労働法のうちの長時間労働の規制に関する点です(この点は、中小事業主では今年2020年4月1日からとされていますので、これからという企業も多いかと存じます)。
労働法分野では、働き方改革ということで、長時間労働の規制及び有給休暇の取得義務の制度が始まりました。今回はそのうちの長時間労働の規制について見ていきます。全てには触れませんが、重要な点をみていきましょう。なお、以下、改正前の労働基準法の法条文を旧労基(法)○○条、改正後の法条文を新労基(法)○○条といい、改正前後を通じて変更がないものは、単に労基(法)○○条といいます)。
1、旧法の規制
まず、そもそも労働時間としては、1週間40時間、1日8時間が上限であると定められています(労基法32条1項2項)。また、休日については、毎週少なくとも1回の休日(又は4週を通じ4日以上の休日)を与えなければならないとされています(労基法35条1項2項)。
ただ、この労基法32条の規定にかかわらず、労組又は過半数代表との間で書面による協定をし、これを所轄の労働基準監督署長に届け出た場合は、その協定で定めるところにより労働時間を延長し、又は休日に労働をさせることができることとされています(旧労基36条1項)。これがいわゆる36協定です。この制度の大枠自体は今も変わりません。
36協定を結べば上限なく労働させることができたかといえば、そうではなく、厚生労働大臣がその限度を定めることとされており(旧労基36条2項)、それは告示という形で定められていました。具体的には、厚生労働省の告示「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」(H10・12・28労告154)によって定められており、1週間で15時間、1か月で45時間、1年で360時間などとされていました。
ただ、このような上限規制はあったものの、労使合意により、「臨時的に『限度時間を超えて延長しなければならない特別の事情』が生じたときに、限度時間を超えて延長することができるという条項」を付けた36協定を締結しておくことで、この上限規制を超えた時間外労働が(当該条項付の36協定の範囲内では無制限に)可能となっていました(上記基準3条1項)。
2、改正の内容
これに対して、今年この旧労基法36条2項以下が大きく改正されました。先の告示も廃止となりました。
まず、時間外労働の上限として、1か月45時間と1年360時間が法律に組み込まれました(新労基36条4項)。そして、臨時的な特別の事情がある場合には、やはり36協定にさらなる延長が可能な旨を盛り込むこともできるとされたのですが、その場合においても、次の規制を守るべきことと定められました(新労基36条5項6項)。
①時間外労働が月45時間を超えることができるのは1年につき6か月まで。
②時間外労働の上限は1年で720時間(720時間ぴったりはOK)。
③時間外労働と休日労働を含めて、1か月に100時間未満(100時間ぴったりはNG)。
④時間外労働と休日労働の合計時間は、連続する2か月平均、3か月平均、4か月平均、5か月平均、6か月平均で、いずれも80時間以内(80時間ぴったりはOK)。
そして、罰則が定められました。
もともと、労基法32条(1週40時間、1日8時間)違反については、罰則が定められていました(労基法119条。6月以下の懲役又は30万円以下の罰金)。ですので、労基法32条の例外としての36協定を締結せずに時間外労働等を行わせた場合や、定められた36協定を超えて労働をさせた場合には、これに該当し罰則の対象となるのですが(この点は新法でも変わりありません)、それに加えて、新労基法36条6項に違反した場合にも同じ罰則を受けるということになりました(新労基法119条1号)。この新労基法36条6項に該当するのは、上記の4つの項目のうちの、
③時間外労働と休日労働を含めて、1か月に100時間未満。
④時間外労働と休日労働の合計時間は、連続する2か月平均、3か月平均、4か月平均、5か月平均、6か月平均で、いずれも80時間以内。
この2つの項目です。ですので、この2項目の違反があれば、刑事処罰を受けることになり得ます。
また、法律上の制限時間である、月45時間及び年360時間の時間外労働を超えて労働を行わせる場合には、当該労働者に対して、「健康及び福祉を確保するための措置」を実施することとされました(新労基規則17条1項5号)。具体的には、医師による面接指導を実施することや心とからだの健康問題についての相談窓口を設置することなどです(労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針(平成30年厚生労働省告示323号))。
以上が大まかな改正点になります。
新たに罰則が定められた部分もありますので、今後はより一層、労働者の時間外労働及び休日労働の時間の正確な把握が重要となります。
長時間労働の規制に関する点は、この外にも細かく規定がなされている部分があり、また適用除外とされている業務、別途の定めがある業種などもありますので、気になる方はご相談ください。
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